つらぬくような軽いいたみ

毎日は書くことができない日記

雪国

 主人公がへたれで金持ちで腐ってて勝手な男なのでむかつく。こんなものを素晴らしいという奴の気がしれない。なんてことを言ったら話がそこで終わってしまう。そうじゃなくて、話をするために話をしよう。どこで終わってもいい小説*1について。
 描写が淡くていつ場面転換したのかを見落としそうになるのだけれど、そんなもんどうでもいいのかもしれない。夕景色の炎や三味線の音や酔っ払った女の子が最高に可愛い、とかいうことだけ覚えていればいいのかもしれない。鋭敏でも鈍感でもなく、ただ繊細で無神経な男。自分語りをするでもなく刹那的でもなく弱虫でもなく、ただ目に映るものが美しいように思えるだけ。
 八色くらいしかないほぼモノトーンの世界。どこが気持ち悪いのか全く指摘できないところが気持ち悪い。と彼女は言った。拍手。美しいことが美しく、美しさを求めることが醜さだとしたら、ただ美しいものがある、というだけなのは何なんですかね。
 悪意、ですかね。僕は好きで、他の誰かはそうでもない、あくい。

*1:川端本人談