つらぬくような軽いいたみ

毎日は書くことができない日記

もし月が見えなくなっても

 二子新地午前零時。マンションの住人はいなかった。住人が単に眠っていただけであることが判明するまでに50分の時間を要する。その間、タバコを吸いながら道路にヤンキー座りする僕たち。道は暗い。女の一人歩きは危ないなと思う。僕らの前を早足で通り過ぎる女性も同意見であるのに違いない。
 釈然としない顔のままの住人の車に乗せてもらった。高速道路を走り抜け、着いたのは海。平たい海に暗い空。そこに月が浮いている。見えない波が月の下でだけ輝いている。もし僕がこれ以上の感動を得られなかったら、死ぬ間際に思い浮かべる月はこの月のままだ。
 やがてただの平面でしかなかった空は明るくなり、大気は球形になり、月の光は後退するように消えていく。テントは立ち、パラソルは広がり、ペンは走り、スケジュールは最終調整に。今年もビーチパーティが始まる。