つらぬくような軽いいたみ

毎日は書くことができない日記

paradise ball

 京葉線は走る。窓の外にはセメント会社と運輸会社。自社を含むあらゆる運輸会社に悪態をつく後輩と僕を乗せて、電車は新木場へ。
 タバコを吸いながら歩く。最後に新木場に来たのは東京湾埋立最終処分場見学ツアーだったかコミケだったか。まばらながら人の流れがあり、よく地理がわからない僕たちはただ流れに乗るだけ。人々に特定の雰囲気があるという点はちょっとコミケに似ている。
 ハコは大きかった。フロアに人はほとんどいなくて、ミサイルポッドのようなスピーカーたちが何もない空間に重低音を打ち出している。駆け回る青い光線。内臓、内股、脳。体の柔らかい部分が全て振動する。
 ボンテージのミスターたちに目を輝かせる後輩。すげー、かっこいい、やってみてーと大興奮。僕は僕で、プールサイドで蜃気楼のような夜景にうっとり。眼下には砂浜。砂漠の家のような壁。海のような運河。その向こうに、セメント工場のかすかな光。グレーがかかって見える景色。振り返ればライトアップされたプールと半裸の男たち。言うまでもなく僕たちも半裸。
 踊り狂う。ローズフロアでもアリーナでもお立ち台でも。人口密度が極限まで高まって芋洗い。さすがに疲れて眠くなって、円形のソファに座って水を飲む。周囲からは唇の音。というより粘膜のこすれあう音。
 それにしてもこのソファがある一角に、僕も後輩も既視感を覚えているのはなぜだろう。気がつくと話し込んでいた。昔のことを少しと普段考えていることを少し。口に出してみると、僕にあるのは過去の生と未来の死ばかり。過去も未来も謎だらけ。でもこうして少しずつ解けるのなら、謎もそんなに悪くない。
 夜が明け始め、夢は醒め始める。プールのライトも空にかき消されていく。