つらぬくような軽いいたみ

毎日は書くことができない日記

男が合法的に血を見るには

 誰が何と言おうと献血は素晴らしい。自傷行為なのに。流れ落ちるほどの出血を伴うのに。誰からも非難されない。逆に賞賛されることすらある。若干気色悪いとはいえ。
 医療機関なので安全度も高い。しかも厳密には自傷ですらない。針を刺すのは自分ではない。わざわざ自分に傷をつけてくれる人なんてなかなかいないでしょう?
 ゆっくり読みたい本もあったので渋谷の献血ルームについ入ってしまう。成分献血でゆっくり過ごそうと思ったら成分献血はやっていなかった。でも今更、じゃ帰りますというわけにもいかない。
 血液量は4444cc。輸血可能量は566cc。順番を呼ばれるまで、献血俳句コンテスト入賞者作品に目を通す。「はつゆめで けんけつしてる ぼくがいた」。「けんけつを したらなんだか かぜひかる」。どちらも小学生の句。小学生は献血できないのに感心なことだ。性的搾取に近い匂いがする。正気か。
 簡単な診察を受け、カルテの美しさをほめられる。そして献血。400cc。ほんの少しの時間。自分の血が容器内でシェイクされる振動が伝わってくる。少し痛い。気持ち悪い。
 前に献血したのはいつですか、と聞かれて1年くらい前ですか、と適当に答えたら本当に1年くらい前だった。そういう季節らしい。