つらぬくような軽いいたみ

毎日は書くことができない日記

矢野絢子

 矢野さんは京言葉のような喋り方で話すので驚いた。今日はようこそ矢野絢子ライブツアー2004。ひやいひやいに。お越しくださいました。今日は。最後まで、ごゆっくり。「立って」。お楽しみください。
 足が疲れた方は、地べたに座り込んでくださって結構です。
 東京。久しぶりに来ました。1ヶ月ぶり。相変わらず工事ばかりしてますネ。
 永遠に未完の都市、と。
 舌足らずな声で淡々と言い捨て、「夕闇」を奏で始める。まるでジュブナイル小説のような台詞。こういうのを萌えというのか、とただ唖然とする。何かを持っていかれた気分。
 東京について、公式ページにへんなにおいの話があったのをずっと覚えていた。これを書いたのがこの人か。東京の空気が嫌いだけど、嫌いであることがときどき好きな僕はただ冷や汗を流すだけ。
 ピアノの音を躍らせながら「ゼンマイ仕掛け」。ぱぱっぱぱぱっぱっぱっ、ぱぱっぱぱぱっぱっぱっ……と声を響かせ続け、ようやく音が消えたとき、矢野さんはつまらなさそうに一言。「…ぱが多かったですか?」
 「ニーナ」を歌う矢野さんの影は大きくて獣のようだった。最後の「てろてろ」もやはり良かった。この感動を誰かと共有したいということばかり考えていた。むりやりにでも誰か連れてくるんだった。