つらぬくような軽いいたみ

毎日は書くことができない日記

国立近代美術館 琳派展

 琳派の流れとしてクリムトとかも参考展示しちゃうよ、なんて触れ込み。著名な画家の権威を借りる、と来場者の幅を広げる、の二つの意味で客寄せ。けれどそれで多くの人が美術品に触れる機会があるならいいこと。大体テーマが何であろうとどうせ自分が見たいものしか見ない。僕はそうだけどあなたはどうですか。
 まだ2週目だったので混んでるんじゃないかと思っていたがそうでもなかった。大抵の展覧会だと著名な作品の前にすごい数の人が集まっていて「お前らそればかり見やがって!」「でも俺も見たい!」という葛藤にさいなまれるものだけど、僕が尾形光琳風神雷神図屏風」の前に立ったとき周りには誰もいなかった。あれ、これって本物なの?と一瞬動揺する。権威以前に周囲の目に弱い僕。
 さすがデザイン。見ていて心地よい。心地よさに職人のプライドを感じる。日本画の知識が皆無に近い僕は、ただ気持ちよく歩くだけ。しかしその足は完璧に止まる。菱田春草「落葉」。横に大きく広がる平面。前面に大きな枝葉。枯れかけの葉は青から黄色へのきれいなグラデーション。奥に木。と空白。森の奥は奥であり、光でもある。CGか、と思って解説を見る。明治42年作。心に粉雪が舞った。
 川端龍子「草炎」もすごい。黒の屏風に金で草を。様々な種類の草が伸び盛っていて、確かに炎にしか見えない。これが一発書きとは。燃える蛍が目に浮かぶ。とどめに加山又造千羽鶴」。荒磯文様。金の鶴。秋の月。螺鈿の岩。全ての要素をぶちこんだあまりにも豪華で調和の取れたデザイン。8の字に旋回する千の鶴はまるで空爆のようだ。遠い月の下、全てを超えてやってくる鶴の群れ。
 前半と後半で展示品入れ替えがある。もう一度行くかもしれない。