つらぬくような軽いいたみ

毎日は書くことができない日記

温泉に行こう

 男友達と一緒に特急に乗って上諏訪温泉に行こう。5年ぶりに上諏訪温泉に行こう。あの日は時間がなくって上諏訪駅の中にある温泉につかることができなかった。僕は無言で服を着たまま浴室に踏み込み、茫然とするおっさんの前で湯船のお湯をエビアンのボトルに汲んだ。今上諏訪駅には足湯がある。もちろん足しかつかることはできない。気がつくと僕の人生は上諏訪駅の温泉に肩までつかることができる人生ではなくなっていたんだ。でもこの程度の「できなかった」ことなら無数にある。無数にある消えた思い出を一つの消えなかった思い出にするために、僕たちは上諏訪へ行く。そう。あの日汲んだお湯を捨てるために。