つらぬくような軽いいたみ

毎日は書くことができない日記

パティシエ・シマ

 ノー残業デーだったので、家に帰り着くと自転車を飛ばしてみた。行き先は麹町。閉店の時間までは十分余裕があり、麹町は知らない街でもない。しかし迷子になる。
 地図を見ると街は格子状になっている。実際の地理もそうなっている。でも、地図の格子と実際の格子がほんのちょっとだけ食い違う。もちろんケーキ屋は見つからない。麹町は坂が多い。かいた汗が焦りを呼び、その焦りはすぐ汗に変わる。こんな状態でケーキ屋行くのかと思うとまた汗。
 見つかってしまえばなあんだ、と思える場所にパティシエ・シマはあった。田舎の町のケーキ屋さんのような、狭くて素朴なたたずまい。残っていたケーキの中からいくつか選んで帰路につく。帰りはケーキを壊さないようにゆっくりと。ジョギングしている人がたくさんいる。
 ケーキはとてもきれいでおいしかった。洋ナシとフランボワーズのシブーストも良かったし、バランスというケーキには溜息が出た。ピスターシュと二層のチョコ、二層のスポンジ。とても奥行きの深い味だった。何より表面が美しい。緑の膜に覆われた精緻なペイズリー模様。こんなきれいなものがおいしいなんてことが、少し信じられない。