つらぬくような軽いいたみ

毎日は書くことができない日記

不機嫌な果実

不機嫌な果実 (文春文庫)

不機嫌な果実 (文春文庫)

 読んで「こんな女がいるわけない」と抗議した男がいるらしい。この本が出たのが1996年。その頃のリテレールを読んでいたら、よしもとばななについて「カツ丼出しても壊れない少女趣味ってのはすごいな」と評している部分があった。この10年間の意識の変化って実はすごいのか。
 嫌な女の話。とはいえ、普段思っていることをはっきりとかたちにしたらそうなるだろうな。金持ちとは縁をつないでおきたい。夫が自分に興味を持ってくれなければむかつく。望みの言葉を言ってくれたら嬉しい。取り繕えるものは取り繕いたい。裏切ってもいいなら裏切りたい。
 後に待つのは空虚。加齢によってどんどん大きくなる空虚。泣ける話だよ。不倫先に夫の誕生日用のステーキ肉を忘れるエピソードは、本当に泣いてもいいと思う。
 それにしても「友達がいるかどうか」と「生活がかかっているかどうか」は大事なファクターだと思うことが最近多い。友達がいて生活もかかっていないのが江國香織で、生活はかかっていないけれど友達がいないのが林真理子で、友達もいなければ生活もやばいのが桐野夏生。という漠然とした作品イメージを抱いているのですけれどどうでしょう。購買層とどう重なるのかも気になるところ。