つらぬくような軽いいたみ

毎日は書くことができない日記

大名時計博物館

 今日のフットサルはお休み。実家に帰ることになっている。実際には明日だけれど。でも確かに、右足の親指は痛いまま。
 朝から「ミツバチのささやき」を見る。根津までクリーニングを取りに行って、天気が良かったのでふと谷中に足を伸ばしてみた。坂を上る。細い道、坂、木陰、剥き出しの土、割れかけたアスファルト、そういうものがどうやらとても好きらしい。下を向いて歩くのが性に合っている人もいるのだなあと思う。
 坂を上った。大名時計博物館は密林の中にあった。密林というのは言いすぎだけど、住宅街の真ん中に椰子の木がによきにょき立っている光景は異様だ。博物館というより古い家のような佇まい。と思ったら「私設」という文字を発見。観光案内板も立っているのに私設なのか。門から中にすべりこむと、確かに家があり、洗濯物が干してあるのが見える。家だ。本当に。
 木陰を縫い、埋め込まれた石の通りに歩くと公民館がある。もちろん公民館なわけはなく、ここが大名時計博物館であるらしい。木の下駄箱にスリッパ。アルミサッシのドア。不在時にはこれで呼んで下さい、というブザー。人の気配はない。
 ブザーを押すかそれとも帰るか迷ったあげく、とりあえずドアをそっと開けると真横に係員が座っていた。失礼ながら一瞬息を呑む。恐る恐る入場料を払い、ちゃんとした印刷の入場券をもらう。中は公民館だけあって単なるワンフロア。薄暗く、空気が澱んでいる。何年もカーテンを閉めっぱなしにした絨毯敷の洋室のような空間。「ような」ではなく本当にそうなのだろうが。
 骨董趣味があるわけでもなく、でも興味は持って時計を眺める。もちろん客は僕以外おらず、時計の音が淡々と響いている。不定時法の話は勉強になった。香盤時計なんかちょっと工夫すれば現代でもインテリアとして使えるのではないだろうか。
 外に出る。時間がどれくらい経ったのかわからない。足元に花弁が散っている。