つらぬくような軽いいたみ

毎日は書くことができない日記

劇場版テニスの王子様

 適当に腹を満たし、近江屋洋菓子店でケーキを買って帰ろうと思ったらメール。ご飯を食べにいくかもしれないのでケーキは買わずに家に帰る。しばらくメールのやり取り。結果として、池袋に映画を見に行くことに。
 待ち合わせ先にいた後輩は僕が持っているのと同じカバンを持っていた。今日はそのカバンでなくてよかった。そんなお揃いはいやだ。今日は特に。
 見たい映画は多々あったにも関わらず、見るのは劇場版テニスの王子様。カウンターで一般一枚、と言ったらご鑑賞の映画は何になりますかと聞かれる。ああ「パッチギ!」も同時公開なんですね。見たいなあパッチギ。でも答えは「テニスの王子様を」。ものすごく恥ずかしい名前のパフェを注文した気分。
 鑑賞券とシネ・リーブル限定テニスの王子様コースターを受け取る。泣きそうだ。周囲を見渡すと妙齢の女性ばかり。男の姿を探したが、4歳くらいの男の子が1人見つかっただけだった。何の親近感も抱けない。
 映画は面白かった。2話あって、最初は本編の「二人のサムライ The First Game」。豪華客船の上で繰り広げられる、主人公とその兄との因縁の対決。
 ストーリーや人物描写が浅すぎるのはまあどうでもいい。逆に浅すぎたおかげで、テニスの王子様をろくに読んだこともなければアニメも見たことがないような人、例えば僕にもわかりやすい作りになっていると言えなくもない。説明的な台詞も多く、とても助かった。
 みんなオレンジを皮ごと食べるだとかトイレの壁紙を勝手にはがした挙句に紛い物呼ばわりだとか、全くもってろくでもない連中ばかり。それだけでも十分笑えるが、やはりすごいのは演出。まずは各方面でも話題になっている手塚ゾーン。手塚部長が使うこの技は、ボールに特殊な回転をつけることにより相手がどこに打ち返そうとしても同じ場所に返っていってしまうというもの。いくら相手が必死になっても手塚部長は一歩も動かなくていいのだからすごい技ではあるはずだが、どちらかというと防御用であって別に必殺スマッシュとかの類ではないはず。なのに光り始める手塚部長。背景は宇宙に。無数のボールは無数の隕石に。銀河の彼方からやってきた隕石群は太陽系に突入し、惑星を次々すり抜けて地球に降り注ぐ。核爆発のような一撃。
 場面は地表に切り替わる。逃げ惑う恐竜たち。背後から迫る爆風。次々と恐竜は炎に飲み込まれる。そして、茫然とする手塚部長の対戦相手も。
 聖闘士星矢かFF7か、と唖然とする僕たちを置いて主人公リョーマとその兄リョーガの対決。当然のように空中で渦を巻いたり、竜巻を起こしたりするがテニスボールで恐竜を滅ぼす手塚部長の後では霞んで見える。期待はずれかと思いきや試合は長い。いろいろあって天気も悪くなり客船も沈み始める。
 リョーマの竜巻は炎を巻き込み炎の渦に。最初は1本だった炎の竜巻は終いには4本吹き上がり、思わずリョーガも立ち尽くして「やるじゃん…」と一言。炎に照らされるリョーガの横顔。この間にボールはどこに行っているのか。
 リョーガも津波を呼び、誰もいなくなった観客席や照明を破壊。水没したテニスコートでスローモーションになりながらもボールを打ち合う2人。最後は高速度で跳躍。客船を飛び出し、雲を突き抜けてもまだ上昇し続ける。体は銀色に光り、服は弾け飛び、最後は全裸で渾身のスマッシュを。
 核爆発や津波や全裸のシーンは音もうるさいので笑い声は聞こえない。聞こえるのはシーンが収まったあと、笑い疲れた人たちがぜいぜいとあえぐ声。
 もう1話は「跡部からの贈り物 君に捧げるテニプリ祭り」。内容は全くわからないが方向性はわかる素敵なタイトル。詳細は省くがいい話だった。「今年だけは今日がお前の誕生日だ」に感動。言われたい。
 映画が終わり、静かになる。どこかの女の子が発した「頭がおかしい」という声が、館内にやさしく響き渡った。