つらぬくような軽いいたみ

毎日は書くことができない日記

泣く大人

 「ひどく滑稽にきこえることはわかっているのだが、私は言葉以外の手段でコミュニケーションをはかるのが苦手で」。
 空いているダーツバーが見つからなかったら、疲れていることに気付いた。家に帰る。終電一つ前の丸の内線。江國香織のエッセイを取り出し、最後のページを読み終わる。
 一週間前、フットサルの会場に向かう電車の中で最初の1ページを開いてから、デール・カーネギーの著作やマーフィーの法則以上にうなずきながら読んだ。やれば片付くことが好きだ。風呂には窓がほしい。友達とは。疲れを分け合うことは。
 わざわざ圧倒されるためにエッセイを読みたくなんてない。この人が自分の書きたいことを書くために、自分のやりたい事をやるために傾けられている情熱の量を直視してしまったら目がつぶれるのではないかと思う。明晰でうつくしい言葉でつづられているから、直視せずに済む。やる気がないとか小奇麗とかでこの人の作品をくくれるのならくくってしまいたい。そんなことはしたくないけど。
 男友達の意見にもうなずき、筆者の意見にもうなずき、うなずき疲れて灰のようになって眠る。今日は10時間しか起きていない。