つらぬくような軽いいたみ

毎日は書くことができない日記

長崎原爆資料館

 親子連れが館内に次々と入っていく。観光客だろう。楽しい旅行だろうに。子供がこれで長崎を嫌いにならないといいなと思う。新しくなった原爆資料館に初めて足を踏み入れる僕。どうせ頭の隅にひっかかったままなら、慣れられるものなら慣れてしまいたい。
 昔の原爆資料館は、全体的に白っぽかった。白っぽくなったタイルに錆びた枠のショーケース。そのガラスには皮脂が浮いている。ショーケースの中には炭になった弁当箱や溶けたガラスと一体化した骨、皮膚がへばりついた布などが。壁には印刷の悪い日焼けした写真。黒ばかりの。展示室自体が透明な廃墟のように見えたものだった。
 新しい原爆資料館の照明は抑え目であり、画像やパネルの展示もきれいで、へし曲がった鉄骨の展示も劇的だ。テーマパークに来たような気分。年表もよく整理されていて勉強になる。本当にお勉強に来たみたいだねえ、と思いつつ被災者の絵と証言を見て10分程度のアニメを鑑賞した。一瞬もう慣れたかと思った。だけどやはり何度も逃げたくなった。
 広島に原爆を落としたエノラ・ゲイは有名だけど長崎のボックス・カーはあまり知られていない。空飛ぶ要塞B29。その機体にはファンシーなイラストが入っていた。本当に入れるんだ。
 放射能の後遺症と対人地雷の後遺症とどっちが深刻なのかねえと思いつつ溜息を一つ。溜息は虚勢。