つらぬくような軽いいたみ

毎日は書くことができない日記

有楽町で会いましょうか

 仕事が早く終わったので家でじっとしている。電話が鳴って外に出たら雨が降っていた。スーツがびしょ濡れになる。泣きたくなるのをこらえて有楽町駅まで走った。ビックカメラの前で携帯を手に彼の姿を探す。そんなに時間はかからない。彼はとても背が高いから。
 なんでわざわざスーツなのかね、と馬鹿な質問をするので丁寧に答えてやる。「こないだ買ってくれたやつだよ」。たぶんだけど、彼は全然気付かないかわりに一度気付いてからは察しがいい。だからごめんね濡らしちゃってとは言わない。
 ああ、なかなか似合ってるじゃないですか。という丁寧語が返ってくる。感情がこもっていないように聞こえる人もたくさんいる声。でもいくつもの対消滅した感情が、抑揚のない声の中でかすかに揺れている。ほめられている気はしない。でも感情を動かしているらしい。それさえわかればそれでいいよ。