つらぬくような軽いいたみ

毎日は書くことができない日記

屋形船

 立会川といえばボラが川を埋め尽くすほど異常発生したことで有名だが、そのとき僕は忙しくて様子を見に行けなかった。そんな立会川に久しぶりに降り立つ。今日は結婚した先輩のお祝い。集まるのは昔の支店のメンバー。でも今もその支店に残っているのはほんの数名。
 立会川付近は住宅街。どこに屋形船があるのかと思ったが、地図通りに進んだらちゃんと運河があり、ちゃんと船が泊まっている。遅刻者は多数いたものの、なんとかほぼ定刻に出発することができた。お座敷。畳。窓の外にはかつて担当させていただいた企業群。指差しながら口々に思い出話を語る。まさか海の上から見ることがあるとは思わなかった。
 沈んでいく夕陽がうつくしい。料理は刺身に天麩羅。船の上で揚げてくれる天麩羅はおいしくて最初は奪い合いだった。まさか無限に出てくるとは思わなかった。食べ放題なのかこれは。
 茄子の天麩羅とかをぱくついている内に船はお台場まで出て来た。ここで新婦にプレゼント。セレブな旦那様のために。バニースーツ。ネグリジェ。全身網タイツ。その他もろもろ。当然ながら試着会が行われることになる。ただしそれを着るのは新婦ではない。
 女性の前で着替えるのはちょっと問題が、ということで先輩たちは座敷の外に出て行く。確かに僕たちからは先輩の姿は見えない。しかし座敷の外は文字通り屋外である。夕暮れのレインボーブリッジに目を向けようとしたのに、目に飛び込んできたのは胸毛も雄々しい男たちのバニースーツ生着替え。そんなカップルが今日お台場に何組いたのかと思うと寒気がする。「久々にこんな下品な空間に紛れ込んだ」と新婦。そりゃセレブがいつもこんなだったらさすがに日本もまずかろう。
 カメラを変な写真でいっぱいにしている内に日が暮れた。夜景がきれいだ。船は動いているときは結構早くて、窓際に腰掛けると夜風が涼しい。
 初めてレインボーブリッジを下から見た。このメンバーで見るというのが、とても不思議でならない。