つらぬくような軽いいたみ

毎日は書くことができない日記

超ビジュアル展

 ブラックスーツにパープルのネクタイをして外に出る。BGMにも本にも気を使って。こないだ結婚式に向かう途中、小島麻由美の「結婚行進曲」を聴きながら桐野夏生の「OUT」を読んでいたら普通に気分が悪くなった。ほとんど自傷行為だ。
 結婚式の会場は恵比寿。なのでポケットには東京都写真美術館の無料招待券。メタ・ヴィジュアル−映像・知覚の未来学−。
 眩く輝く壁。紫外線フィルターを通すと鮮やかな絵が。地面から生えている工具やカトラリー。手を触れるとその影が姿を変えて襲い来る。家の模型。ボタンを押すと高速で回転し、回転する家がキャンバスとなって歪んだ家のホログラムを映し出す。
 もう一度ボタンを押すと家は幻像から解放され、ただの回転する家となってやがて止まる。コンピュータグラフィックの世界ではよくある映像。でも質量を持った家が回転し、歪む姿は知覚を混乱させる。人格をプログラムにしてコンピュータの中に入り込む、っていう設定がよくゲームや小説ではあるけれど、それに近い。人類が今まで体験したことのない知覚。
 河口洋一郎作の紅く揺らぐ屏風を眺めつつ、平野啓一郎が生み出した文字列を流し読み。なんて心地よい空間。