つらぬくような軽いいたみ

毎日は書くことができない日記

有楽町で会いまして

 ガード下のような場所にある吉野屋でいつものように豚丼を食べている。ふと聞こえる名前。ちょっと太っちょの学生。ちょっといい奴そうな学生。ちょっとロックな学生。そんな3人が豚丼を食べている。僕と同じ名前の誰かの話をしながら。
 意外とキツい女が好みなそいつは、その子が部屋に入ってきたときそれはもう大喜びで、その嬉しそうな顔ったらなかった。まとめるとこれくらいのこと。そいつは僕みたいにすぐ顔が赤くなっちゃうのかな。嘘をつくときは脇の下以外から汗が引くのかな。僕も見たかったよ。その光景。
 やがて吉野家によくいる人の見本みたいな3人組は去って、一人の老人が僕の隣に座る。「豚丼並盛り」「それと」。彼はポケットから青いプレートを取り出す。「すまんな」「4日前に持ち帰ってしまってそのままだった」。気がつくと彼の細い指を見ている。独り言になる1秒前の声。「ずっと返しに来ようと思っていたのだけど」。青いプレートに黄色のビニールテープ。もしこれが映画なら。僕は愚かなエキストラだったのかもしれない。目を伏せて。320円を。払う。